国宝 三井寺展

 今年前半は、仏像の展覧会が続く。
 サントリー美術館「国宝 三井寺展」、世田谷美術館「平泉」、そして、東京国立博物館「阿修羅展」。

 その第1弾として3月11日(水)、「国宝 三井寺展」に行く。
 「秘仏開扉」のうたい文句にふさわしく、滅多に拝観できない秘仏中の秘仏を展示。そのほかにも逸品ぞろいの展覧会だった。

 まず、二つの智証大師坐像。

 別名「御骨(おこつ)大師」と呼ばれる像は、円珍(大師)の御骨を納めた像で、円珍入滅(891年)後間もないころの作とされる。ゆったりとした体躯に厳粛な存在感を漂わせ、雰囲気ただならぬ像。逆に見られているような視線を感じる。この像を観られただけで来てよかったと思った。
 もう一つは「中尊大師」。卵型の特徴のある頭部と、どこか茫洋とした感じがする表情。特にこれといった印象なし。

 次に黄不動立像。玉眼の鎌倉時代の作で、円珍が感得した黄不動尊の画像の模刻。162㎝の大きさ。全身金色で、膝の上までまくりあげた裳の彩色が美しい。全体的に整いすぎた感じがあるものの、生命感を感じさせるから、決して嫌味でない。

 そして、その黄不動尊の絵画。これは日本史の教科書などでもお馴染み。近年修復されていて、20年ぶりの開帳とのこと。これが観られたのも嬉しい。

 このほか、新羅善神堂の本尊新羅明神坐像や観音堂(正保寺)の本尊如意輪観音坐像の秘仏を間近に拝観できたことも貴重。

 さらに、この展覧会の調査で新たに確認された不動明王坐像は、東寺の像に次ぐ古い像で9世紀にさかのぼる可能性があるということだったが、それはその外見からも納得できた。

 絵画では狩野光信の勧学院客殿障壁画「四季花木図」もあったが、歌川広重の「近江八景之内 三井晩鐘」の色鮮やかさと風情が印象に残った。