六波羅蜜寺の仏像・新発見の運慶の大日如来像ほか

 19日(金)の夕方、東京国立博物館。平成館での大々的な特別展でなく、本館の特集陳列ということで、他のお客さんも少なくゆっくり拝観できた。しかも、トータルの内容はとても優れていた。たった600円でとても得した気分。

 数年前に六波羅蜜寺を訪れた際、その物語性と控えめな美しさに心を惹かれた定朝作の地蔵菩薩立像、栄華を謳歌した清盛らしからぬ俗臭とはまったく相反する質朴さを感じさせる伝平清盛像、ユニークな表情と垂れた乳が小憎らしいくらいにマッチする奪衣婆坐像、天暦5年(951年)の寺創建時に空也が造った四天王像の一躯とされる持国天立像、「運慶ってこんな顔だったの(ちょっと猿に似てない?)」と思った運慶坐像などと、久しぶりに再会。ただ、六波羅蜜寺といえば、口から出た南無阿弥陀仏が有名な空也上人像だが、こちらは寺に残されてきており、観られなかった。

 そして、「二体の大日如来像と運慶様の彫刻」。運慶様とされるが、事実上ほぼ運慶作とされる二体の大日如来坐像。うち一体はこの春、ニューヨークのオークションで日本円にして約12億5000万円で日本の仏教教団真如苑によって落札された新発見の運慶像。事前にテレビで「流転の運慶仏〜「大日如来像」の謎を探る〜」で、その発見の様子、今回一緒に展示されている光徳寺の小さな大日如来坐像とのつながりなどを観ていたことから一層感慨深い。
 柔らかそうな肌でいて、全体的に引き締まった印象も醸し出していて、美しい。肩から背中の少し丸みを帯びさせたところなんかも自然である。お顔は運慶作らしく気品があり、小さく小さく心の奥底に秘めた赤いコアのような強さ。息をするのを忘れるほどの素晴らしい像だった。

 また、「那智山出土仏教遺物」も貴重な機会だった。あの辺りは飛鳥時代の仏像など仏教伝来草創期の遺物が残っていて、注目の場所。今回展示されていた十一面観音菩薩立像は日本における十一面観音像の最古例。飛鳥時代らしい造りで、「待ってました」という感じで観せてもらった。