- 作者: 宮本常一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2002/12/09
- メディア: 文庫
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この本は、明治時代、関東から東北、北海道までを旅したイギリス人の女性旅行家イザベラ・バードの著書『日本奥地紀行』から、当時の庶民の風習・生活ぶり、町・村の風景等に関する記述を抜粋しながら、宮本の解説を加える形でまとめられている。
教科書では書かれていない庶民の生活の様子が、宮本の該博な知識により解説されていて、とても新鮮である。
ほとんど着物らしいものを身につけていない子どもたちは、何時間も傍に立って私をじっと見ていた。大人も、恥ずかしいとも思わずその仲間に加わった。(第十一信)
と、つまり、真裸の子どもがいたということです。私が旅をしていても、戦前、あるいは戦後の昭和二十五年頃には鹿児島県下の田舎を歩いていると、ほとんどの子が、男の子も女の子も真裸だったのです。それがまたとても可愛いかったのです。絵巻物を見ていても、よちよち歩きの子が真裸のが非常に多いのです。その裸の子を背負う場合に、母親が素肌に負うて、その上からねんねこを着るのですが、これも日本にしかなかった習俗ではなかろうかと思うのです。これは着る物が少なかったということにも、原因があるとは思いますが、子どもと親が肌を接するということが多かったのではないか。
いったい日本ではどのくらい裸があったのだろうかというと、話し合ったことがあったのですが、ペリーの『日本遠征記』を読んでいると神奈川のあたりで船に乗っている人がみなふんどし一つで裸だったと書いてあるし、『日本その日その日』の中でE・Sモースが日本人はみな裸といっている。これは着物をできるだけ汚さないようにしようという考えから、働いている時には汗が出るので裸になったのだと思います。