柳家さん喬の「おせつ徳三郎」

 昨日12日(金)、夕方、執筆者である弁護士の先生の事務所にできあがった本を持ってお礼に。その後、副編集長のIさんと池袋演芸場に行く。

 柳亭市馬の「かぼちゃ屋」に続いて、柳亭小菊の俗曲。かっこよくて粋な姐さんが三味線ひいて、都都逸。観て、聴いて、いい気分。柳亭小燕枝の「長短」は気の短い人の話ぶりがあんまり。お仲入りの後、柳亭左龍の「二階ぞめき」。灰汁の強い顔で吉原の女を演じるのだが、元の表情を忘れるほどいい。若旦那が一人でけんかをする見せ場も面白い、面白い。その後は紙きり林家正楽。客のリクエストが「蝉時雨」とか「秋の七草」とか。持ちネタを声掛けているのか、初めて言われて切ったのかが気になる。にしても、リクエストのお題がいいでしょ。地上の池袋の雑踏とは隔世の感あり、です。

 そしてトリは、柳家さん喬。今日の一番の目当て。ネタは(後から調べたのだが)「おせつ徳三郎」。

 すっと入ってきて、座布団にすっと座る。これが美しい。そこからすでに他の人とは格が違う感じ。驚いた。Iさんとあとで飲んだとき、Iさんが「まるで一人芝居を観ているようだった」と言ったが、まさにそう。話しているだけなんだけど、風景、人、すべて目の前に観ているような感じ。いいものを聴かせてもらい、しばらく興奮がさめなかった。