『そばかすの少年』 ポーター

そばかすの少年 (光文社古典新訳文庫)

そばかすの少年 (光文社古典新訳文庫)

 生まれて間もなく、片手を切断されたうえで、
 施設の前に捨てられた少年。
 自分の名前すら知らず、見た目から「そばかす」と呼ばれる。

 「そばかす」は、大人すら恐怖でいられないという、
 「リンバロストの森」で木材泥棒から森を守る番人の職を何とかして得る。
 森や沼地にはガラガラ蛇や得たいの知れない動物がうごめく。
 孤独と恐怖、厳しい自然と闘いながら、
 そばかすは、たくましく成長していく。
 初めて人の愛情に触れて感動し、初めて自分でお金を稼ぐことで自由を感じる。

 そばかすのまっすぐな気持ち、シンプルなストーリー、周囲の人たちの温かさ、
 最後の意外な展開。

 これを読んで連想したのが「絵本」の力。
 絵本は、単純で短いストーリーに、分かりやすい絵が描かれている。
 それでも大人は子ども同様、時に心を揺り動かされる。
 
 大人が書く小説では、人間の複雑な心の動きを醜くとらえてクローズアップしたり、
 理屈で無理して生きる大人たちのせめぎあいがあったり、
 ストーリーも一筋縄ではいかないなど、
 身近すぎて疲れるというものも少なくない。

 時にシンプルなストーリーに登場人物、ハッピーエンドという単純な物語も、
 心地よく元気が湧いてきていい、と感じる。