「レベッカ」

レベッカ [DVD] FRT-001

レベッカ [DVD] FRT-001

 脚本、演出、描写(カメラ)という映画の基本要素のよしあしは、テクノロジーの乏しかった昔の作品ほうが分かりやすいかもしれない。そんな思いから、少しばかり意識的に昔の名作を観ていこう。

 今回観たのは、ヒッチコックの心理サスペンス「レベッカ」。ヒッチが英国からハリウッド入りしたときの最初の作品で1940年(和暦でいうと昭和15年)の製作。

 嫌味な金持ちおばさんの付き添いの仕事で、モナコモンテカルロに来ていた若く美しい米国人女性の「わたし」(ジョーン・フォンテーン)が、英国の大荘園マンダレーの当主(ローレンス・オリヴィエ)に見初められ、2度目の妻として大邸宅に迎えられる。前妻のレベッカは悲しい事故で死亡したという。庶民の出自で立ち居振る舞いもままならない「わたし」が、美しさ、教養などすべてがパーフェクトであったというレベッカと自分を比較してさいなまれる。

 前妻レベッカの様子は、今も邸宅を取り仕切る怖い女中を通して主に語られる。レベッカの写真、過去にさかのぼった映像による描写は一切なく、すべてが人の噂や思い出といった語りのみで描写される。目に見えるのは使用していた調度、文具、衣装など。豪華のひと言。レベッカが「見えない」というのは、「わたし」の持つレベッカに関する知識と、観ているぼくらの知識が同じ、つまりそれにより抱く不安も同じということ。

 レベッカが生前使っていた部屋は死亡した当時のまま保存され、「わたし」は「絶対に入ってはいけない」と、女中に釘を刺される。しかし、なぜかあるとき、そこに人の気配が…。

 女中がレベッカの部屋に入った「わたし」を見つけ、開け放った窓から飛び降りて自殺するよう「わたし」の耳元で語りかける。怖い、怖い。

 しかし、そこからラストまでの展開が「意外」の連続で、ハラハラ感が最後の最後まで持続する。

 とても面白かった。